
少し昔の話をしよう。
あれは某コーヒー飲料がオリジナル・ジャンパーを景品に販促キャンペーンをしていた頃。
そのキャンペーンは、缶に付いたシールを何十枚だか集め、専用ハガキに貼り付け応募する・・・というものだったと思う。
キャンペーンの効果もあってか割りと売れ筋だったその缶コーヒーは、職場(当時)の駐車場前の自販機にも入っていた。

とある冬の日の午後、陽がだいぶ傾いた頃。
その日の仕事に決着をつけるため自販機にてエナジー系ドリンクを購入する某の背中に、「すみません」と声を掛ける何者かがひとり。
ガタンと落ちてきた商品を取り出しつつ振り向くと、その者はすたすたと距離を詰めながら同じフレーズを繰り返してきた。
「何でしょうか?」と 応えるが早いか、その者は間髪入れずに自販機横の空き缶専用ダストボックスを指差し、悪びれる事なくこうの給った。
「キャンペーンのシール集めてるんですけど、あそこから取ってもいいですか?」
これに対し、しばし考える・・・フリをしてやや間を取った後「そんなみっともない真似はやめろ」と少し憮然とした口調でその者を嗜める某。
それを聞いて取り付く島も無いと悟ったか、その者は一言もなくその場を立ち去って行ったのだった。